忘れ得ぬ「濡れ女子」

昔高校生のころ、ひどく真面目そうで僕に比べたらよほど人間のしっかりしたような同級生とふとしたきっかけで横に並んで歩いていたところ、小雨に降られてついには前を歩いていた制服姿の女子もみんな濡れているという状況になり、それまでB級映画への周りの不理解を淡々と嘆いていたその男が「濡れ女子」という語を不意に発し、たちまちその女子の魅力なのか自身の性癖なのかどこへとも着地しない話を熱っぽく語りはじめ、あまり人間が変わったようになったから僕はこころの中で「この人も自分で制御を忘れるほどの感性の振れ幅を持っているのだな」としきりに感心して、彼の熱弁を話半分に聞きながらただつらつら歩いていたのだが、彼はその熱情のために部活動の後輩の女子から少し蔑まれるような目で見られているという告白をはじめ、この漏れ出るようなむさ苦しさではさもありなんと思っていたが、何かにいたく感動してふりみだす気持ちの敏感なところが、自分以外の人間にもあるのだなと妙に感慨を覚えた出来事だっぷん。